第二話 極限を超えたオペ室
最新医療と医師の成長
今回もブラックぺアンを一緒に視ていきましょう!前回は二人の天才外科医、佐伯教授と渡海先生の手術からスタートでした。そしてライバル帝華大の刺客、高階先生の「スナイプ」がお披露目されましたね。
研修医の世良先生は、渡海先生に振り回されて大変そうでした。今時あんなことをやったら一発でアウトですね笑。医師の数は年々減少しているようなので、一人一人大事に育てていく必要があります。外科医の仕事は本当に体力勝負なところがありますからね・・・。
今日の治療は真新しい術式もそうですが、最新の医療機器の発達も目を見張るものがあります。一昔前では考えられないような技術が今は多く存在します。そんな中、医者の技量はどうでしょうか。医療機器に使われないよう、技を磨く毎日でしょう。お互いがお互いを最大限高め合えば、良い治療になることは間違いありせん。
今回はまさに医療技術と手技について少し考えさせられます。早速見ていきましょう。
医者の矜持
腹部大動脈瘤(AAA)
救急搬送で「腹部大動脈破裂」の手術です。とても研修医が太刀打ちできる手術ではありせん。お腹にある大きな動脈、腹部大動脈の瘤が大きくなり破裂(の危険性)するため、その箇所を人工血管に置換する必要があります。運ばれてきた段階で破裂していれば救命は極めて困難です。また、無事に手術を終えたとしても、お腹の臓器に送る血液のメインの血管でもあるため、術後多臓器不全に陥ってしまう可能性もあり、予断を許さない状態です。
上の画像にある通り、腎臓動脈の上に瘤があるか下にあるかでも血管の再建数が異なってきます。また腹部大動脈は、両足の動脈(左右総大腿動脈)に分かれるため、瘤の状態によっては左右それぞれの血管再建が必要となります。腹部大動脈のみの単純な再建をI-グラフト、大腿動脈までの再建をYーグラフトといいます。渡海先生は瘤の除去から血管の中枢(心臓側)を再建、そして「はい、左の人工血管終わり。左いくよ、4−0(針糸)」といいます。しかし急に「やめた。」と、研修医に残りの左大腿動脈の縫合を研修医世良先生に命じたのです。世良先生は必死に縫合しますが、血管をデクランプ(遮断解除)すると、血が吹き出ます。縫合が甘く隙間から出血してしまいます。世良先生はパニックになり、渡海先生が再建を終わらせるといった流れですね。
一研修医が血管の再建を任されることはまずないですが、不十分でも縫合した世良先生のポテンシャルは高いです。糸結びからできない先生は大勢いますからね。それだけ日々の努力をしていることになります。渡海先生はどれほどの努力を重ねて来たのか、それとも天性の才能か。今後の展開が気になるところです。
スナイプ手術②
「誰でも僧帽弁の手術ができる」ということで、スナイプによる手術を高階先生以外の医者が手術を行うことになりました。僧帽弁置換は僧帽弁形成と違い、人工弁を入れることになるので、患者の年齢などを考慮する必要があります。なぜなら、人工弁にも生体弁なら耐久年数があり、器械弁なら一生抗血栓薬を飲む必要があるためです。
手術が始まり、順調に僧帽弁をリリースできたかと思いきや、僧帽弁が心室内に脱落してしまいます。佐伯教授の言うとおり、予定外の角度でリリースしてしまったことが原因のようです。このままでは人工弁が邪魔をして心臓が十分な働きをすることができず、全身に血液を送ることができません。また、無理に引き抜こうとすれば、心筋などに引っかかり心臓が裂けるかもしれません。初めての症例で異例の事態に、慣れた医者が不在では手の施しようがありません。
患者を助けるために、高階先生が登場しましたが、人工弁回収の際、心筋を傷つけてしまったようです。すぐに人工心肺を開始し、心臓の負担を減らしますが、止血コントロールがつきません。
ここで渡海先生が登場します。まずは裂けた心筋を縫合します、開胸器をかけ、フェルト(縫合の際、結んだ糸で組織を裂いてしまわないように、組織にフェルトを挟んで縫合します)を使用し縫って行きます。
次に脱落した人工弁の摘出です。「ドベイキー」は第一話でも説明した通り、心臓外科の基本的な器械で、先端に細かい溝が掘ってあるセッシです。セッシ1本で心臓内の人工弁を摘出するのは、中を直視できないため、完全に指先の感覚のみで手技を行うことになり、天才渡海先生しかできない芸当と言えるでしょう。
さらに、佐伯式で僧帽弁形成術を行うと言います。心臓が弱っており、人工心肺の時間を長くかけれないため、オンビートでの形成を行います。弁形成は縫合の仕方が上手く行っていないと、MR(僧帽弁閉鎖不全)になり、何度もやり直しになることが多いです。それを制限時間内に、1度の縫合で、それもオンビートでやりきるのは、まさに神業ですね。
そして最後、スナイプを挿入した箇所、心尖部の縫合を「お前やれよ」と世良先生に命じるのです。
ここで世良先生を指名したのは、単なる意地悪ではなく、世良先生の努力を評価したものに感じますね。縫合完了し、渡海先生の「じゃあペアン外せ」は大動脈瘤破裂時の光景がフラッシュバックしますが、出血することなく無事に縫合できており、私含め皆さんほっとしたのではないでしょうか。
世良先生の今後の成長も期待したいですね。
賭け
さて、高階先生と渡海先生のやりとりで、1000万で揉み消す話でした。高階先生は荷物をまとめており、世良先生は「本当にこの病院を出て行かれるんですか」と残念そうです。高階先生は「君はこれからどうするんだ」と問いかけます。研修先変更届を破り捨てる世良先生、すると「ありがとう」と。「ではよろしいですね、渡海先生」といい、高階先生と渡海先生の間で賭けをしていたことを打ち明けられます。
高階先生は、世良先生を信じていたみたいです。高階先生の辞表は取りやめとなり、まだまだスナイプの研究が続きそうですね。
まとめ
第二話もドキドキの展開が続きましたね。高階先生はフェードアウトかと思われましたが、なんとか賭けに勝利し、辞表は免れまた。世良先生の活躍もこれからどんどん増えそうですね。
腹部大動脈瘤の破裂は救命が難しい症例です。大体の患者さんは腹部のCTで瘤の状態を知ります。もし医師からの指摘があれば早めのフォローをお願いします。僧帽弁の状態に関しては、症状が出る頃には病態が進行している事もあるので、定期検診を受けて、自身の体の状態を把握しておきましょう。
では、次回もお楽しみに。
最後までお読みくださりありがとうございました!
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