手術用縫合糸って?
どうも、今回は手術で実際に使われている針糸についてお話ししようと思います。
みなさんは手術用の針糸ってどんなものが使われていると思いますか?実際に手術を経験された方や、手術室で勤務されている方なら、なんとなく想像がつくと思います。抜糸をイメージされたり、今の糸は溶けて体内に吸収されるんでしょ?と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
実はどちらも正解で、現場では用途によって縫合糸を使い分けているのです。その特徴を知ることができれば、実際に仕事場で医師から必要な縫合糸を言われてもピンとくることができますし、手術の際、希望する縫合方法なんかが相談できるかもしれません。
さっそく見ていきましょう。
縫合糸の種類と特徴
吸収糸と非吸収糸
吸収糸
文字の通り縫合した後、体に自然と吸収される特殊な糸になります。吸収される期間はおおよそ180日〜210日(約半年)程度となり、その間に縫合箇所が癒合することを期待できます。
抜糸をしなくて良いのが利点であり、創部の縫合を吸収糸で行えば患者さんの負担軽減につながります。しかし、血管や神経、腱など癒合しても縫合部に脆弱性が出てしまうと困る箇所では基本的には使用しません。
非吸収糸
体内に吸収されることなく基本的にずっと縫合部に留まる糸となります。患者さんの創部に使用した場合は抜糸が必要になってくるため、負担を強いることになります。
しかし、上記に挙げた部位(血管や神経、腱など)に使用することで、縫合箇所を強固に癒合させ、強い力に対しても長い期間耐久力を維持させることができます。
網み糸(バイフィラメント)か単糸(モノフィラメント)
網み糸
複数のフィラメント(繊維)を編みあげた糸のことです。蚕の糸、すなわちシルクを想像して貰えば、細長い繊維を少しずつ編み込んで1本の糸に仕上げていることがわかると思います。
メリット | デメリット |
---|---|
柔軟性があり扱いやすい →編み込んだ糸は柔らかく、自由が効くため取り 扱いがしやすいです | モノフィラメントに比べて組織の通過性が悪く、組織を挫滅させるおそれがあります |
結節の保持に優れる →結んだ際、糸が柔らかいためしっかりと結び目を保持してくれます | 繊維の束の集合であるため、網目の隙間に細菌が宿り感染の原因になる恐れがあります |
結び目が大きくならない →繊維同士が集まることで結び目が大きくなりにくいです |
モノフィラメント
単一のフィラメントからなる糸です。人工的に作成され、素材は様々なものがあります。単一繊維のため表面は平滑でツルツルしています。
メリット | デメリット |
---|---|
表面が均一で滑らかなので、組織の通過性がよく組織を傷つけにくい | 柔軟性に欠け、クセがついた状態が治りにくく跳ねて操作がしにくい |
単一繊維のため細菌が入らず感染が伝播しにくい | 網糸に比べ結び目の保持力が弱い&結び目が大きくなりやすい |
天然か合成か
天然糸
天然の吸収糸は、牛の腸を原料とした「カットガット」と呼ばれるものがあります。ただし、合成のものと違い組織内での張力が短く、組織反応が強く起こるため特殊な用途以外で使われることはほとんどなくなりました。
天然の非吸収糸は昔から使われている絹糸(シルク)があります。柔らかく使いやすい上、価格が安価であり、今でも幅広く使われます。
合成糸
合成吸収糸は、今では多様なものが存在します。吸収性の編み糸であればグリコライドとラクタイドの共重合体からなる「バイクリル」などがあります。
吸収性の単糸(モノクリル)ではポリジオキサノンを材質とする「PDS」などがあります。
合成の非吸収糸は、編み糸ではナイロンを編んだ「ネオブレード」や、ポリエステルを使用した「エチボンド」などがあります。天然の非吸収糸に比べ強度が高く、頑丈です。
モノクリルは「ナイロン」や「エチロン」、ポリプロピレンを使った「プローリン」が挙げられます。
まとめ
まとめると以下の通りです
→ 編み糸 → バイクリル
合成
↗️ → モノフィラメント → PDS
吸収性
↘️
天然 → モノフィラメント
→ 編み糸 → ネオブレード
エチボンド
合成
↗️ → モノフィラメント → ナイロン
プローリン
非吸収性
↘️
天然 → 編み糸 → 絹糸(シルク)
いかがだったでしょうか。手術で使用する針糸も様々な種類があり、多様に使い分けをしていることが分かっていただけたら幸いです。このほかにも、抗菌薬が練りこんである商品や、吸収期間が短いものなんかもあり、多種多様となっています。
色んな針糸の特徴を掴んで、ニーズに応えていきましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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