二人の医者
みなさんこんにちは
今回もブラックぺアンを細かく見て行きたいと思います。
佐伯式とスナイプ手術。二つの術式と二つの大学病院。今回は対立、対比がより濃く描かれます。
どちらが優れ、どちらがより良い手術なのか、どちらがより良い医者なのか。その判断は誰が行うのか。
インパクトファクターは誰の手柄になるのか。
見どころ満載の第3話 開幕です
第3話 二つの緊急オペ
二人の患者
2回の失敗で後がなくなった高階先生。佐伯教授の元には患者が集まるばかりです。世良先生は二人の患者さんを受け持ちます。「僧帽弁狭窄症」と「僧帽弁閉鎖不全症」の患者さんです。
僧帽弁狭窄:僧帽弁の石灰化(動脈硬化などにより弁が固くなる)により、弁の開閉が悪くなる病態です。僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁で、肺から戻った血液が左房に入り、その血液が左心室に入りにくくなります。結果として、全身に送る血液が少なくなり、心臓に負担がかかります。
僧帽弁閉鎖不全症:僧帽弁が左室拡大などにより、弁が完全に閉じなくなった病態です。また、僧帽弁は腱索と呼ばれる弁を支える糸状の腱があり、その腱索が切れた場合も閉鎖不全となることがあります。
どちらの病気も弁の開閉がうまく行えないため、手術を行います。
①弁を人工弁に丸ごと取り替える:僧帽弁置換(MVR)
スナイプ手術ではこれを開胸せず行えます
②弁輪を人工弁輪に取り替える:僧帽弁輪置換(MAP)
僧帽弁の周囲を人工弁輪で締めることで、弁が寄り閉鎖不全を解消させます
③閉鎖不全の原因となっている弁を縫縮、人工腱索を立てる:僧帽弁形成術(MVP)
これをオンポンプ・オンビートで行うのが佐伯式となります
上記いずれかの術式を患者の病状に合わせて行います。手術中に弁形成がうまく行えなければ弁置換に変更になることもあります。
スナイプ手術③
肥大型心筋症
スナイプ手術を渡海先生が行うことになりました。ですが、手術開始直前経食道エコーの画像を見て「やめた」といい、メスを置き出ていきました。
佐伯教授の言う通り心筋の検査をすると、心尖部の脆弱性が確認されたのです。
このまま心尖部のアプローチをしていたら心臓が裂けて大出血となっていたでしょう。
ここから高階先生と世良先生によるシュミレーションが始まりました。しかし、渡海先生はそんな努力などせず自らアプローチの箇所を見極めました。
Reスナイプ手術
二度目のスナイプ手術です。このシーンは少し器械出し看護師である猫田さんが写りますね。「肺を避けて」「ツッペル」と言われツッペルを渡します。
ツッペルとは、ガーゼを小さく丸めて作られた柔らかいボールのようなもので、鉗子に挟んで使います。肺や心臓など臓器はものすごく繊細で、直接鉗子などで避けたりすると傷つけてしまう恐れがあります。ツッペルは柔らかくコシもあるため、視野を確保したり組織を鈍的に剥離したりすることができます。
ついでに「タニット」とも言われます。逢着した糸をゴム管に通し締めることで、スナイプや送血管を挿入した際、隙間からの出血を防ぐことができます。
渡海先生は順調にスナイプを挿入していきます。が、ここでもう一人の患者が急変してしまいます。
心タンポナーデ
もう一人の患者、僧帽弁狭窄症の方が心タンポナーデに陥ります。
心タンポナーデとは、「心臓の周りに大量の血液などが留まり、正常な拍動が出来ない状態」とあります。心臓は心膜と呼ばれる膜で覆われており、その膜があるおかげで心臓が他の臓器と干渉することなくスムーズに拍動することが出来ます。しかし、大動脈解離や冠動脈瘤などの破裂により出血を起こしてしまうと心膜内に血液が溜まり心臓が徐々に動けなくなってしまいます。心臓が溺れてしまうような感じですかね。
このような場合、早急な処置を行わなければ死に至ります。場面では心エコーをで見ていたので、エコーガイド下で針を刺し、心膜内に溜まった血液を出すなどの処置があげられます。また、正中小切開にて心膜を開けタンポナーデを解除する方法もあります。
渡海先生は「猫ちゃん・・・左かな。」と言い、「はい。」と猫田看護師は出て行きました。隣の部屋で手術の準備をして、患者を運びすぐさま手術を行う流れとなりました。あっという間に手術を行う準備が整っていますが最低でも
①手術に必要な器械を展開(清潔な器械を台に並べる)
②麻酔の準備(全身麻酔や、全身状態をコントロールするための薬剤を準備)
③点滴の確保(動静脈ライン、CVライン)
④挿管(全身麻酔)
⑤体位設定(通常であれば正中開胸の仰向け体位ですが、今回は左開胸指示のため半側臥位)
あたりを行う必要があります。手術を行うにはそれまでの下準備も重要となります。
冠動脈瘤破裂 冠動脈バイパス術(OPCAB)
渡海先生と高階先生が交代し、渡海先生が心タンポナーデの処置を行います。まずは左開胸にて破裂した冠動脈瘤の止血です。左開胸は正中開胸と比べ視野が悪く、冠動脈を処置するには術野が深く非常に難易度が高いです。
瘤の止血の後は冠動脈バイパス術です。左の内胸動脈を剥離し、破裂した瘤の先の冠動脈に吻合します。胸の裏側の血管を剥離して行くため、椅子に座り覗き込むような姿勢となります。
冠動脈バイパスは人工心肺を用いて行うオンポンプオンビートのバイパス、さらに心停止下で行うCABG、そしてポンプを用いないオフポンプバイパスOPCAB(オフキャブ)があります。
心拍動下で冠動脈に吻合するのはあたり前ですが難しい上、さらに左開胸という条件の悪い中、渡海先生は何事もなく処置を行なって行きます。
二つの手術
渡海先生は映像を見ながら二つの手術を同時に進めて行きます。高階先生の手術で「PSVT」が起きます。これは「発作性上室頻拍」といい、心臓の上の部屋である心房が関与する不整脈で、通常よりも早く心臓が脈打つ病態です。突然始まり、数分で収まることもありますが、放置しておくと「VT」上室頻拍から「VF」心室細動が起こり心停止となる可能性があります。
渡海先生はただの不整脈と判断し「ベラパミル」の投与を指示します。これは心筋収縮力や心内刺激伝導を抑制することで、頻脈を戻す効果が期待できる薬剤です。
打開策
高階先生はスナイプをこれ以上進めることができず、完全に停止してしまいました。渡海先生はバイパスを脅威的な速さで終えます。しかし血圧が戻りません。もともとの僧帽弁狭窄症のせいで心臓の機能が低下しているためです。助けるにはこのまま僧帽弁の手術を行う必要があります。すぐさま人工心肺の準備を進めようとしますが、渡海先生は「待て」と世良先生に手を伸ばします。
高階先生のもとに渡海先生が登場します。高階先生に「スナイプ使え。向こうの患者左側開けといたから、そのまま心尖部にスナイプ突っ込め。」と。
ここでようやく猫田看護師に伝えた「左かな」の意味がわかります。渡海先生は初めからここまで予想し、猫田看護師もすぐに理解しそれに応えたのでしょう。
二つの手術がスナイプによって無事に成功しました。
まとめ
今回はここまで!
スナイプ手術を同時に成功させた高階先生と、渡海先生。デバイスを使った手術で簡易的に終えることができれば患者の負担も減り、術後の復帰も早くなることが期待できますね。
理事長戦の思惑も絡む中、今後もどんな展開を見せてくれるのか楽しみです。
それでは、今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!
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